アドレスの創業時からの主力業務の一つとしてデータ入力があります。入力対象としては、アンケートなど調査関係のものも少なくないのですが、入力だけではなく、郵送調査に関係するアンケートの印刷と封入、発送まで承っています。
印刷からアンケート調査に携わらせていただくと、さまざまなアンケートの書き方があることに気づきます。中には、間違いとか失敗とはいえないにしても、回収率に良くない影響を与えるかもしれない記述が目に付くものもあります。今回はアドレスが協力させていただくことの多い、シンクタンクや特に大学などの研究機関の方がアンケートを作成する際に、あと少しの気遣いで回収率を少しでも上げることができそうなTips(コツ)についてご案内します。
1.アンケート全体の見通しが効いて、視覚的に理解できる構成にする
すべての回答者がアンケート作成者の意図を理解して粘り強く回答してくれるとは限りません。「回答を記入始めたけれども、最後まで回答するのがおぼつかない」という“回答体力”のない人や忙しい中でも時間を割いていてくださる人のことを想像してあげてください。
a)設問の大きな区切りごとに、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ・・・や1、2、3・・・と区切る
大きな設問の区切りや設問そのものに番号を振るだけで、回答者が記述しているのがアンケート全体のどのあたりかすぐに分かります。回答記述が進んでいる実感も得られます。途中で記述を中断した際に、戻る際の心理的負担も軽減できるはずです。
b)インデントや文字の大きさや太さを利用して階層化をレイアウトからも見える化する
インデント(字下げ)を利用して大設問、小設問の関係をぱっと見ただけでも分かるようにしたり、文字の大きさや太さを変えてアンケートの階層構造を視覚的に表現すると、視覚的に回答を支援することになります。
※ただし、下線や太字を多用して注意させる箇所が多すぎても逆効果になりそうです。
c)ページ番号を記す
延々と同じような質問が続くアンケートでは、回答記述が進んでいる実感はページ番号からしか感じ取れないかもしれません。また、問い合わせの対応に一番に役立つのがページ番号です。
d)回答所要時間を冒頭に記す
回答所要時間をアンケートの冒頭に記すと、全体の見通しが立って回答しやすくなります。
2.設問や回答欄での注意点
回答者はさまざまで、アンケートをなめるように読み尽くして回答する人から、設問を斜めにしか読まないで即答する人もいます。どちらの人にも対応したいものです。
a)誤字脱字を無くす
年度末ギリギリのアンケート調査だとしても、誤字脱字だけは頑張って無くしたいところです。一つくらいは愛嬌ですが、二つ、三つと増えていくと調査の真剣味が問われてしまいます。
b)表現をできるだけ統一する
たとえば、「~をどう思いますか。」「~をどう考えますか。」という表現が混ざっており、調査上の区別がないならば、表現を統一した方がよいようです。真剣に回答して下さる人に限って、その違いに考えを巡らせてしまうものですので、そうしたありがたい協力者の負担を軽減できます。
c)単数回答の設問か、複数回答の設問か、回答者が間違えないように記す
設問が単数回答か複数回答かは全ての設問に記しておきたいところです。とくに、単数回答設問だけれども複数回答にも理解できる場合は、単数回答設問であることを太字で示したり、「最も○○な選択肢にマルを付けてください」などと追記して工夫する必要があります。
3.アンケートの表題に注意する
アンケートの表題は、アンケートの回答者を選びます。回答して欲しい人にとって、できるだけ理解しやすい表現が必要です。具体性は必要ですが、あまり具体的にすると間口を狭めることになり、対象者の関心に引っかからないかもしれませんし、かといって、抽象的にすぎると焦点がぼやけ、これも対象者の関心に引っかからないかもしれません。アンケートと同封の「依頼書」にアンケートの趣旨が記載されていても、回答者は、まずアンケート、特にアンケートの表題を見てそれが何ものかを判断するはずです。第一印象を与える表題は大切です。
a)分かりやすい表題が一番
・一般の方への「住民意識調査」ではまだ抽象的ですので、たとえば、そのアンケートが地域防災についてのものならば、「地域防災についての住民意識調査」とした方が良いようです。表題が第1の回答支援になるはずです。また、企業や官公庁対象のアンケートの場合、まずは、適切な回答者の手元に届かなければ回答が得られませんので表題まで配慮した方が良さそうです。
・冒頭の表題に難しいテクニカルタームが利用されていると回答者によってはそれだけで敬遠してしまう可能性があります。できるだけ分かりやすい言葉を利用するのがベターです。
b)回答者目線に立ったアンケートの表題 を
研究機関の方がつくられる調査票でしばしば見られるが、研究題名をそのままに近い形でアンケート名に利用してしまいがちです。たとえば「○○における▲▲の動態解析についてのアンケート」としてしまうケースです。この場合、動態解析はアンケート実施後に調査者が行うものであるため、直接回答者に尋ねるものではないはずです。「○○における▲▲のクラスター調査」「○○と▲▲の関連性調査」というのも、クラスターや関連性を見つけ出すのがリサーチャーの仕事ならば、同類です。回答者目線に立つと、動態解析や何らかの関連性までも尋ねるアンケートと思われてもしかたありませんし、そう感じた人の中には回答にひるむ方もいらっしゃるはずです。研究題名を表題に付けることで、調査の趣旨が想像できるメリットがあるかもしれませんが、分かりやすくて取っつきやすい表題の方が良いようです。
※「アンケート」という言葉について
アンケートの名は体を表しますので、「○○に関するアンケート」という表題が一番分かりやすいと思うのですが、研究者の方には「アンケート」という表現を忌避する傾向があります。どうやら「アンケート」とはフランス語の「enquête」という語に由来しており、その「enquête」は「調査」を意味しているため、「アンケート調査」は重複表現となるし、そもそも英語やフランス語では「アンケート」ではなく「Questionnaire」という語が利用されるため、「アンケート」という語は適切ではない、という理由のようです。
とはいえ、学問的な厳密さはともかく、「アンケート」という語はすでに国内で和製英語としての地位を確立している言葉でもあるので、それほど他国の用例に従う必要もないのではないでしょうか。国語辞典において「アンケート」という言葉は「Questionnaire」と同じく「質問票」という意味だとされていますし、行政でも「アンケート」という言葉は長らく使われています。更に、逆に「Questionnaire」を日本語に翻訳する際にも「アンケート」という訳語がわざわざ当てられる傾向があり、Googleでもそのフォームサービスに「アンケート」という表現が利用されています。
学問的な厳密さについては報告書や論文において「質問票」という表現を利用して確保するとしても、アンケート実施時には、学問的な厳密さとは別世界に生きている回答者の立場に立った表現がいいと思うのですが、いかがでしょうか。
4.最後のお礼
どんなアンケートでも回答の記述で完了するのではなく、その回答を返していただいてようやくアンケート回答として成立します。がんばって記述したけれども、投函や返信が煩わしいと感じている回答者もいらっしゃいます。
a)アンケートの末尾にお礼を一言記載すると好感度は上がるはずです。投函へのあともう一押しができるかもしれません。
b)感謝の念を伝えつつ、更に「記入漏れが無いように最後にもう一度ご確認ください」と一言添えると、実直にもう一度見直してくれる人もいるはずです。属性などの重要項目の記入漏れがあると分析の役に立たないことになり、その他のすべての回答の労を無に帰すことになりかねません。記入漏れについて一言触れると回答者も救うことになるはずです。
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今回のご案内は以上です。当たり前と言えば当たり前のことばかりですが、ソツなく実施することで、アンケートの回収率は僅かでも上がるはずです。Webアンケートでも利用できるTipsもありますので、一度お試しください。
アドレスでは郵送調査のアンケートの準備に携わらせていただく際には、こうしたちょっとしたTipsについてもご提案させていただいています。次回にもご案内しますが、他にもいろいろノウハウがありますので、ぜひご相談ください!