先日、日頃ひいきにしてくださる大学医学部の先生とゆっくりお話しできる機会がありました。先生はもう何年にもわたって健康調査票のデータ入力をアドレスに依頼してくださっていて、振りかえれば延べ数万人分になる大変なボリュームです。昔から気になっていたのですが、その日思い切って、そんな膨大なデータが何に利用され、どう活きているのか尋ねてみました。
お話によると、先生の研究分野は「疫学」と呼ばれる領域だそうです。疫学とは、もともと伝染病(疫病)の研究から始まったのでそんな名前がついているのですが、現在では公害から生活習慣まで広く扱い、疾患などの発生の原因や変動を統計的に明らかにする分野だそうです。よく知られているところでは、喫煙者と非喫煙者との肺ガン発生率の比較などが疫学研究の成果とのこと。(最近ではアスベストの被害者同定などもこの分野の研究のたまものでしょう。)
この研究には地道でねばり強い調査が必要で、先生が「たとえば」といって取り出された英語の論文は、4000人の生後から20歳までの追跡調査のたまものです。何事もスピードが尊ばれる今日、20年間にもわたる気が遠くなりそうな貴重な調査です。
「そうそう、これもいつか君に仕上げてもらったデータを元に書いた論文だよ」。英語の論文を嬉しそうに私に渡してくださいます。私自身、うれしくも誇らしくも感じた瞬間でした―とはいえ、英語の苦手な私は、実は私の仕事の何がどう活きているのか結局何も分からなかったのですが(苦笑)。
(DTI制作部 Y.M.)