テープおこしのプリンシプル10
「ジャーゴン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ジャーゴン(英:jargon)とは、「専門用語」などと翻訳されたりもするヨーロッパ起源の言葉で、「内輪にしか分からない特殊な用語」を意味します。日本語で言うと「隠語」という言葉が近い表現になると思います。隠語で代表的な言葉は業界用語で、たとえば、警察用語として一般的にも知られている「ドス(小刀)」、「マルタイ(対象者)」、放送業界での「巻く(急ぐ)」、「シースー(寿司)?」なども隠語と言うべき言葉です。そしてこれらもジャーゴンということはできるでしょう。
ただし、ジャーゴンという言葉は隠語よりも幅広く利用され、たとえば、科学者が一般人に何かを説明する際に、たとえ正式な表現であろうと専門の術語ばかりで話すと「ちんぷんかんぷんで、あれはジャーゴンばかりだ」と非難されたりします。つまり、隠語はあえて正式な表現を避けて話される表現ですが、ジャーゴンは正式な表現であろうが無かろうが、外部の人とコミュニケーションが成立しにくい言葉を指すわけです。
テープおこしで一番困るのがこのジャーゴンだと言われます。といっても警察官の会話や放送業界人の現場や飲み会の発言を文字おこしするケースはまずありません。また、上でジャーゴンの例として挙げた科学技術の用語にしても、調べてみると多くは特定できるため大きな問題ではありません。
実は、ちょくちょくご利用いただくのに、悩ましいのが会社の社内の会議です。「チュウケイ」が中期計画、「トリ」が取締役会くらいのジャーゴンならば脈絡から判断するのは難しくありませんが、それよりディープな社内用語ははっきり聞き取れても正確な文字に置き換えられないかもしれません。
ある巨大メーカーは膨大な数の部署名や関連会社名や社内用語についてアルファベットで記号化されたコード表を作成していましたが、大きな会社になると内部の人たちも混乱しそうですのでルール化されて共有されるのだと思います。利用者本人も意識してジャーゴンを利用しているわけではないケースも多いため、外部とのコミュニケーショントラブルが発生してはじめてジャーゴンだと気が付くケースも少なくないようです。
お客さま皆さまはお気づきではないのかもしれませんが、実は録音されたお客様ご自身の社内会議のふとした一言が、私たちの作業者にとってその日一番の難敵になっているのかもしれません。。。
シリーズ「テープおこしのプリンシプル」では、テープおこしの専門業者の立場からテープおこしの実体についてご紹介します。
*プリンシプル(principle):原理、原則、行動指針の意。