テープおこしのプリンシプル 1
「制作者も会議に参加する」といっても、会議のテープおこしを外部委託する際には必ず臨席もセットにしなければならない、という意味では決してありません。
録音(録画)媒体をお預かりするケースにおいても、文字おこしをする者は、その会議の参加者になったつもりで録音を聴き取っている、という意味です。
音声情報は不思議なもので、理解していないことは正しく聞こえません。
皆さんも電話口でちょっと変わった名前の方に何度名前を尋ねても聞き取れなかった経験はないでしょうか。漢字表記をうかがったりして正しい発音が分かると、それからは最初の聞き取れなかったことが嘘のように「正しい音」にしか聞こえないから不思議です。
名前などの固有名詞の聞き取りは、知っているか知っていないかの差が大きく現れる極端な例ですが、人は耳慣れない言葉を聞き取るのが苦手ですので表面的に聞こえる声を文字にしようとしても、それだけではなかなか正確に文字化できません。
会議の文字おこしならば、会議の主旨説明や資料説明を追体験して内容を理解すると、正確に文字化できる可能性が高くなります。聴き取りにくい発言についても、会議の内容や流れを理解すると自然と聴き取れることがしばしばあるのです。少々突飛な発言もフォローできるかもしれませんし、発言の末尾を曖昧にする話しぶりでも正しく文字化し、果ては言い間違いと思われる発言の訂正や指摘、申し送りまでできるわけです。
テープおこしを依頼いたいただいた後、制作担当者は遅れ馳せながら会議に参加しているのです。
シリーズ「テープおこしのプリンシプル」では、テープおこしの専門業者の立場からテープおこしの実体についてご紹介します。
*プリンシプル(principle):原理、原則、行動指針の意。