テープおこしのプリンシプル3
会議のテープおこしを依頼いただく際には、参加者リストを資料の一つとして必ずお預かりしています。
参加者リストをお預かりする理由の第一は、発言者を特定し、名前を記しておくためです。
たとえ名乗っていなくても、やはり大学の先生ならばそういう話し振りだったり、公平性に目配せした発言内容だったりしますし、官公庁の職員や民間企業の人ならば、それぞれの属性に違わない話し振りや内容だったりします。そうした細やかな情報を参加者リストに照らし合わせると発言者を特定できる可能性が上がります。
お預かりする第二の理由は、発言者を特定するだけではなく、さらに進んで会議の内容を理解するため、言ってみれば、会議内容を特定するためです。もしかするとこちらの理由の方が大きいのかもしれません。参加者リストに記載のある所属や役職を見ると、発言者の立場から言外の前提も想像でき、その参加者の発言の理解、更に会議全体の理解が進みます。たとえば、この会合の参加者はすべて医学研究者だから医学用語を話すだろうし、よく見ると、感染症の研究者ばかりだから感染症に関わる専門用語が話されるだろう、とか、この会議には経済の専門家や弁護士が委員になっているので内容の専門性が高そうだが、一般人代表の委員もいるから、専門用語は程ほどに抑えられて一般的な言葉が利用されるだろう、とか、です。
参加者は会議の目的にそって選ばれているため、参加者リストはまずハズレのない前提条件となります。人はある程度の予見を持たなければ対象を理解しにくいものですので、この参加者リストという前提条件から、いわゆる「あたり」を付けながら聞き合わせると理解が進み、そうすると果たして言葉が聞き取れることになるわけです。
紙ペラ一枚の参加者リストですが、そこからうかがい知れる情報は会議理解に奥行きを与えてくれるのです。
シリーズ「テープおこしのプリンシプル」では、テープおこしの専門業者の立場からテープおこしの実体についてご紹介します。
*プリンシプル(principle):原理、原則、行動指針の意。