■整文作業で気を配らなければならないものの一つに方言の処理があります。
アドレスのテープおこしでは標準的に書き言葉にするので、イントネーションの違いは文面には表れないのですが、その方言の語彙自体が独自な場合は方言のままにするか、いわゆる標準語に書き換えるか、迷う場合もあります。お客さまのご要望や用途によるのですが、基本的には、方言が発言者の個性となる座談会・インタビューなど雰囲気が重要な形式ではできるだけそのままにし、発言内容の事実関係自体が重要な会議録等では標準語に書き換えています。
■ところが、標準語に書き換えようと思っても、自分の「ネイティブ」ではない方言では、その単語の微妙なニュアンスが感じ取れなかったり、そもそも標準語にピタリと該当する表現がなかったりします。たとえば、私たちの北陸地方で言う「つるつるいっぱい(容器にあふれる寸前まで液体を入れた状態)」は標準語では表せない気がします。「なみなみ」では、あの表面張力が働いているようなギリギリ感が全然表現できていません。
■さいわいアドレスには各地出身の制作者がいるため、近隣地方の出身者が担当していますが、各地の耳慣れない言葉に遭遇するたびに、語源や意味をいろいろ想像してみています。日本語の多様さと同じくらいにテープおこしの奥深さを感じる瞬間でもあります。